エンジンブレーキ知らない? ペーパードライバーあるある ブレーキ編3選

ブレーキ

ペーパードライバーの方に、「ブレーキのかけ方の種類はいくつある?」と質問してみても、「えっ、ブレーキって1つじゃないの?」と言われてしまいます。ペーパードライバーあるあるです。
クルマのブレーキのかけ方、かかり方には3種類がありますので、この記事で説明していきましょう。ブレーキは安全運転の要です。

フットブレーキを踏む
目次

走行中のクルマのブレーキのかけ方(かかり方)3選

『ペーパードライバーあるある』の「ブレーキって1つじゃないの?」って思ってる方はきっとフットブレーキしか想像できていないのかもしれませんね。でも、ブレーキと言ってもいろいろあります。

ブレーキの種類を知ってる方は、他にもパーキングブレーキがあるじゃないかと思う方もいらっしゃると思います。パーキングブレーキとは、サイドブレーキ(ハンドブレーキ)や足踏み式、最近では電動ブレーキなどがありますね。これは、駐車中にクルマが静止した状態を保つためのものです。

今回は、走行中のブレーキのかけ方(かかり方)にポイントを絞って、3選お伝えしたいと思います。
できるだけブレーキの仕組みを理解すると、走行中でもブレーキがかかった時の状態をイメージできるようになるので、運転が上手くなっていきます。

①フットブレーキ

フットブレーキとはいわゆるクルマのブレーキで、アクセルペダルの左隣にあるブレーキペダルを言うことが多いですね。
当社の人気記事「ペーパードライバーあるある30選」にも出ているように、ペーパードライバー歴が長い人だと、「アクセルペダルとブレーキペダルの位置はどっちだっけ?」と忘れてしまっている方もいらっしゃるようです。

●フットブレーキの位置

ブレーキ
ブレーキ(左)・アクセル(右)

さて、上画像でフットブレーキはどっちでしょうか?
答えは、左側です。右側はアクセルペダルです。
忘れていたペーパードライバーの方は、しっかりと覚えてください。

通常、AT車(オートマ車)では、右足でブレーキを踏んだり、アクセルを踏んだりしてクルマを操作します。左足は左端にあるフットレストに置くのを基本とします。
左足でブレーキを踏む方法もありますが、慣れないと混乱することもあるので注意が必要です。

●フットブレーキの仕組み

フットブレーキの仕組み(出典:曙ブレーキ

上図は、ドライバーが踏むブレーキペダルから車輪の中のブレーキ本体までを図式化したものです。
図の左側のディスクローターがタイヤと共に回転していますが、これを止めるのがブレーキキャリパーとブレーキパッドです。
右のドライバーがフットブレーキ(ブレーキペダル)を踏むと、その力がブレーキキャリパーに伝わり、回転しているディスクローターをブレーキパッドで挟んで摩擦力によりディスクローターを止めようとします

つまり、キャリパーが挟む力=ブレーキの踏む力の強弱でクルマが減速したり停止したりします。

ブレーキの踏む力が強い ➡ キャリパーが挟む力が強い ➡ 回転するローターが止まろうとする力が強い。

弱い場合は逆のことが起きて、クルマはなかなか止まりません。

ブレーキの仕組みを理解できると、ブレーキの踏み方の強弱がクルマの制動にかかわってくることがイメージしやすいと思います。

フットブレーキは、クルマを運転する時に一番使用する装置なので、慣れてくると注意を怠りがちですが、次に示す、大事故を起こす可能性のあるフットブレーキの現象を必ず覚えておきましょう。

●【注意】フットブレーキが効かなくなる!

フットブレーキをかけている時に注意したいことは、フェード現象ベーパーロック現象を起こさないようにすることです。

特に、山道などの長い下り坂で、フットブレーキを多用しすぎるとフェード現象やベーパーロック現象が起きやすくなり、ブレーキが効かなくなります。

先述の「フットブレーキの仕組み」のことを思い出してください。

「回転しているディスクローターをブレーキパッドで挟んで摩擦力によりディスクローターを止めようとする」のですが、この時、車が走り続けようとする力を摩擦による熱に変えて放出しています。
つまり、車の運動エネルギーを熱エネルギーに変えて放出しているのがブレーキです。(小学校の理科から習っている「エネルギーは形を変えているが総量は一定である」という「エネルギー保存の法則」を想い出そう。)
1トンを超える重量物の車が動いているのだから、それが止まろうとしてたくさんの熱を排出しているのが想像できるでしょう。

そのためフットブレーキを多用しすぎると、その大きな熱がブレーキパッドを溶かしてしまうので、ブレーキの効きが悪くなります。これをフェード現象と言います。

また、ブレーキを多用した時の熱は、ブレーキピストンやホースに伝わり、ブレーキオイルに含まれる水分を沸騰させてしまい、全くブレーキが効かなくなる現象、ベーパーロック現象を起こします。オイルに気泡が生じてしまうと、フットブレーキを踏んでも全く力が伝わらなくなってしまうのです。

下り坂ではブレーキを多用しがちですが、この状態になるとブレーキが効かなくなるため重大な交通事故となります。

ただし、市街地などの短い坂道であれば、ほとんどフェード現象・ベーパーロック現象などを起こす心配はありませんので、迷わずフットブレーキを使って減速しましょう。

ですから、フットブレーキだけを使うのではなく、長い下り坂ではエンジンブレーキを併用するのがおすすめ、というか安全な運転の仕方です。次の項で詳しく説明します。

②エンジンブレーキ

ペーパードライバーや初心者ドライバーには「エンジンブレーキ知らない…」という方も見かけます。ペーパードライバーあるあるです。
また、運転歴が長いドライバーでも、「エンジンブレーキを知っているけど面倒だから全然使ったことがない…」という方もいらっしゃいます。運転歴が長い人のあるあるです。

でも、「運転が上手くなりたい、安全な運転をしたい」と思ったら、フットブレーキと併用してエンジンブレーキを上手に使用することがおすすめです。

●エンジンブレーキの仕組み

エンジンブレーキとは、エンジンの回転の抵抗を利用して減速する方法です。
駆動輪で働くので、FF車であれば前輪、FR車であれば後輪、4WD車であれば4輪でブレーキがかかります。(車種によってシステムが異なる場合もあるので、ペーパードライバーに限らず自分が運転する車について調べておきましょう。)

アクセルペダルから足を放すだけでエンジンの回転が落ちるので、それだけでもエンジンブレーキがかかって減速します。これは、ペーパードライバーの方でも容易に想像できることでしょう。
でも、先述のような長い下り坂では惰性でクルマが動いてしまうので、アクセルペダルを放しただけでは減速しません、そんな時、シフトレバー(シフトノブ)でシフトダウンすることによってエンジンブレーキをかけ、車速を落とすことができます。

シフトレバー

●エンジンブレーキの使い方は?

エンジンブレーキをどうやって使うのかというと、例えば上画像のダイハツ・ムーヴのシフトレバーの場合、Dレンジ(4速)からSレンジ(3速)やBレンジ(2速)にシフトダウンすると、エンジンブレーキがかかって減速します。
ローギア(3速→2速→1速)であるほどエンジンブレーキの利きは強くなります

車種によってSレンジ、Bレンジ、Lレンジ、2レンジなど仕様が違うので、マイカーの取扱説明書をよく読んで覚えておきましょう。

先述のとおり、フットブレーキを踏みすぎるとフェード現象やベーパーロック現象が起きやすくなり、最悪ブレーキが効かなくなります。山道などの長い下り坂では、このエンジンブレーキを有効に使いましょう。
使い慣れてくると、フットブレーキをこまめに使わなくて済むので、ペーパードライバーにとっても便利になるでしょう。

●【注意】一気にエンジンブレーキを使わない

かつては、エンジンブレーキを使うとエンジンの回転数が上がって燃費が悪かったのですが、現在では、アクセルを離すと燃料カット(フューエルカット)される車が大半なので、エンジンブレーキを使用した方が燃費が良くなります。
下図のように、エンジンブレーキを使用した方がフューエルカットの時間が長くなり、燃費が向上します。

エンジンブレーキの燃費(出典:JAF

そのため、「エンジンブレーキがエコだから万能!」と考えてしまっているドライバーも散見されます。
けれど、よーく考えてみてください。

エンジンブレーキを使用すると、リアのブレーキランプは点灯しないですよね。一気にエンジンブレーキを使ったら危険じゃありませんか?

後続車がすぐ後ろにいる時、一気にエンジンブレーキを使用すると、ブレーキランプがつかないので後続車のドライバーに減速していることをアピールできません。あなたの車が減速したことに気づかずに追突される恐れがあります。
特に、スピードが出ている時下り坂の時は要注意です。後続車がとっさにブレーキを踏んだとしても、制動距離(ブレーキを踏んでから止まるまでの距離)が長いので、より追突事故の危険が高まります。
エンジンブレーキは、十分な車間距離があることをバックミラーで確認してから使用しましょう

また、雪道など滑りやすい環境で一気にエンジンブレーキを使うと、急減速のためタイヤがロックしてスリップしてしまう危険があります。

さらに言うと、スピードが速い時にいきなり1速・2速などのローギアにシフトダウンすると、エンジンが過回転になって故障の原因となることがあるので、車速に応じたギアを選ぶようにしてください。多くのAT車ではエンジンが過回転になるギアは、選べないようになっています。

夏休みや冬休みに観光地の山道を走ろうと思っていて、エンジンブレーキの使い方がよくわからないペーパードライバーの方。
FDS東京のペーパードライバー講習を受講して、長い下り坂でエンジンブレーキの使い方をマスターしてみてください!

ここまでで、フットブレーキはブレーキペダルで、エンジンブレーキはシフトレバーで操作することは分かりました。
次は、ペーパードライバーの方はもちろん、一般ドライバーにもまだあまり馴染みがないかもしれない回生ブレーキについても勉強しておきましょう。

③回生ブレーキ

回生ブレーキとは、近年市販されるようになったHV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)に装備されているブレーキのことです。

回生ブレーキを利用した、アクセルもブレーキも1つのペダルで行う「ワンペダル」という仕組みの車もあって、ペーパードライバーでも聞いた覚えがあるかもしれません。
また、ペーパードライバーから脱出するため、運転しやすいハイブリッド車やEVを新しく購入した方がいらっしゃるかもしれませんね。回生ブレーキの特徴を理解しておくと、あとあと役に立つと思います。

●回生ブレーキの仕組み

回生とは文字通り「生き返る」ことです。車の走行でムダに捨てている熱エネルギーや運動エネルギーがあるので、それを生き返らせてブレーキに利用しているのが回生ブレーキです。

例えば、先述のフットブレーキのところで、「車が走り続けようとする力を摩擦による熱に変えて放出している」と説明しましたが、これが運動エネルギーが熱エネルギーに変換される瞬間です。この熱エネルギーは放出されて終わってしまうので、とてももったいないですよね。

回生ブレーキは、この熱エネルギーとして失ってしまう運動エネルギーを電気として回収し、クルマを止める力として使うのでエコなのです。
アクセルを放したときにはモーターが回って抵抗になるので車は減速していき、外部から回されたモーターは逆に発電機になり、バッテリーに充電されます。回転する運動エネルギーを電気エネルギーに変えているのです。

●【注意1】回生ブレーキは満充電時には作動しない!

上記のとおり、回生ブレーキはアクセルを放した時に充電していきますが、バッテリーが満充電の時には、回生ブレーキは効かない(作動しない)ので注意しましょう。

この場合は、速やかにフットブレーキを踏んで減速します。

また、止まる寸前や停止している時には回生ブレーキは効きません。HV、EVのブレーキは、常に回生ブレーキと油圧ブレーキ(フットブレーキのシステム)を併用した「協調ブレーキ」を使って、安定した使い心地に制御されています。
回生ブレーキに頼り切った運転をするのではなく、回生ブレーキ、フットブレーキを適切に使いこなしましょう。

「ワンペダル」の操作では、元々、回生ブレーキが効かない部分はフットブレーキで補っていますので、意識しなくてもアクセルを離すと同じようにブレーキ(0.2G)がかかります。しかし、その時は自動制御で油圧ブレーキ(フットブレーキ)を多用していることになっていることを忘れないでください。

山道のワインディング走行で、ブレーキを酷使していると危険です。
回生ブレーキが効かなくなり、久しぶりにフットブレーキを使う時には、先述のフェード現象やベーパーロック現象に注意しましょう。

●【注意2】回生ブレーキでブレーキランプが点灯しない時

最近、回生ブレーキを使用しているドライバーは、エコのためにできるだけフットブレーキを使わないようにしている人もいるようです。「車検の時にブレーキパッドが1ミリも減っていない」というのは回生ブレーキあるあるです。

でも、回生ブレーキはブレーキランプを点灯させない時もあるので注意が必要です。

なぜブレーキランプが点灯しない時は注意が必要なのか?というと、後続車に対して減速したり、停車していることが明確にアピールできず、追突事故の可能性が高まるからです。

回生ブレーキのシステムは自動車メーカーによって違いはありますが、減速Gを感じた時にブレーキランプを点灯するようです。ですから、一気にアクセルを放した時はブレーキランプが点灯しますが、先が赤信号でノロノロと減速している時、停止している時などにはブレーキランプは点灯しません
ブレーキランプが点灯しないため、遠くから近づいてくる後続車からは減速したり、停車していたりすることが明確に分かりません。天候が悪い時や夜などは特にそうです。
もし、ブレーキランプが点灯していないことに気づいたら、フットブレーキを踏んで、後続車にアピールした方が安全です。

これは、エンジン車のエンジンブレーキでも言えることですが、極端な使い方はエンジンブレーキでは少ないです。一方、回生ブレーキでは、極低速になるまでフットブレーキを使う必要がないので、常態化してしまいます。

先述のとおり、回生ブレーキは低速や停止状態の時に効き目はありませんが、油圧ブレーキ(フットブレーキ)と協調して制御されています。バッテリーが満充電の時や極めて低速や停止している時、回生ブレーキを使っているつもりでも油圧ブレーキが使われています。
ですから、車の自動制御によりブレーキランプを点灯する時を選んでいるので、メーカーやディーラーに問い合わせて、自分の車がどの様な時にブレーキランプを点灯しているのかを確かめておくのがおすすめです。

これからペーパードライバーを脱出するため、回生ブレーキを装備した車を運転しようと思っているペーパードライバーの方、便利な回生ブレーキとフットブレーキを適切に使って、安全運転を心がけましょう。

エンジンブレーキ知らない? ペーパードライバーあるある ブレーキ編3選:まとめ

エンジンブレーキを知らなかったペーパードライバーの方、このブレーキ編3選の記事で3種類のブレーキのかけ方について、少しでも勉強になったでしょうか。
少し難しかったかもしれませんが、仕組みがわかってくるとフットブレーキ、エンジンブレーキ、回生ブレーキの適切な使い方がイメージできるようになります。

でも、実際に運転している時はそれぞれのシチュエーションにより、ブレーキの使い方に迷うこともあるかもしれません。
もしブレーキの使い方で迷った時は、ぜひFDS東京のペーパードライバー講習を利用してみてください。

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